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2004.07.25

『書店の近代 本が輝いていた時代』小田光雄著

タイトル:『書店の近代 本が輝いていた時代』
著者:小田光雄
出版社:平凡社
定価:740円
初版:2003年5月
ISBN:4-582-85184-3

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タイトルまんま(こら)、江戸後期から第二次大戦前に至るまでの「書店」について、その商法や社会的、文化的役割、また流通機構の変化などを、書店の社史や、作家のエッセイなどを通じて考察している本だ。

前に感想を書いた『モダン都市の読書空間』
http://gozar.cocolog-nifty.com/meongmoengi/2004/06/post_2.html
が大正〜昭和10年くらいまでを対象としているのに対し、こちらは特に、明治期の出版模様、書店模様が充実しているので、その部分をとりあえず補おうかと思い、手に取ってみた。

この本で興味深いのは、近代の書店のありようが、証言的な資料を引きながら、いきいきと語られているところだ。
江戸時代〜明治初期の書店は、これも前に書いた『絵とき 百貨店「文化誌」』
http://gozar.cocolog-nifty.com/meongmoengi/2004/04/_.html
に出てくる江戸〜明治の呉服店のような、いわゆる座売り形式で、店頭で注文された本を、店員が奥の在庫に取りに行く、という売り方だったらしい。
よく考えれば、至極当然のことなのだろうが、改めて「あっそうか、そりゃそうだよな、本屋といえば何でも陳列立ち読み、と考えるのは、近代以降なのか」と気づかされた。
他にも、明治期に専門書を取り扱った書店たちの活躍や、丸善など老舗の書店が、どのように洋書店として輸入販売を行っていたのかなどが描かれており、とても面白い。
特に、義務教育制度による教科書出版の需要が、大規模な図書の流通ルートを全国的に広げ、競争が加熱するあまり、歴史年表でおなじみの?「教科書疑獄」につながった、というくだりは、思わず膝を打った。
他にも、プロレタリア専門図書の行商販売(!)や、エログロ洋書の翻訳出版秘話、ダダ&アナキズム専門書店の話など、出版史のメインストリームから外れた、こぼれ話も載せている。

しかし、各項目は大体10P以内でまとまっているだが、それを読みやすいと思うか、物足りないと思うか、意見が分かれそうだ。
個人的には、何かの連載ものとして書かれた文章の集まりであれば、それで合点も行くが、書き下ろしとして見てしまうと、突っ込み不足の感は否めない。
前提は全部出てきた、さあそれで?というところで、あっけなく文章が終わってしまうのだ。
考察の裏付けになっている資料が、文学関係者のエッセイや、回想記的な文章が多いことも、突っ込みの甘さを感じさせてしまい、極端なことを言えば、良くも悪くも引用文を積み上げ再構成している、という印象が強い。
文学ファンにとっての裏話的読み物としては、そういう構成が面白いのかもしれないが...。
近代日本における書店が、本と人、人と人との出会いの場であった、という作者のまとめも、気持ちは分かるのだが、その方向に文章を意図的に向けようとしてる感じも無きにしもあらず、というところが、少し鼻についた。

どうしても『モダン都市の読書空間』と比較してしまうのだが、こちらは参考資料も統計資料が多く、理論の展開は研究論文形式に近い。
研究誌などに発表されたものを、再構成した文章だからかもしれない。
著者の推察が、数値的にビシバシと裏付けられていく過程の面白さに、読みながらぐいぐいと引きつけられた。
あと、本書で、特価本市場や「日本出版配給株式会社」までを話題にするのであれば、『モダン都市...』で取り上げられた「回読会」も、流通機構の一環として、触れて欲しかったなと思う。
著者としては、雑誌よりも図書に重きを置いて書きたかった、その意図も分かるのだが...。

さっき「文学ファンにとっての...」という言い方をしたのだが、実は私、人生の大半を本好きとして過ごしているのに、明治〜昭和前半の近代日本文学は、教科書もの以外、殆ど読んでいないのだった(激汗)。
だから、この本に近代文学ファンにとってのツボがちりばめられていても、その有り難みが、いまいち分かってないのかもしれない。
逆に、物語ものより論文ルポものの方が好きだから、『モダン都市の読書空間』の方が、「ツボ」にはまるのだな、きっと(笑)。

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