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2004.05.18

『小さな箱』のつづき:神奈川県立近代美術館の個人的な思い出

『小さな箱 鎌倉近代美術館の50年 1951-2001』を読んでいたら、
(http://gozar.cocolog-nifty.com/meongmoengi/2004/05/_50_19512001_.html)
「鎌近」にまつわる個人的な思い出がいろいろと浮かんで来て、本の感想とごっちゃになってしまいそうだったので、項目を改めてまとめてみることにした。
書評のアップから時間があいてしまい、少々まぬけではあるのだが…(汗)。

私が「鎌近」を初めて訪れたのは、1990年、大学3年のときだ。
それまでも鎌倉は、小学校の修学旅行(山梨県ではそうなんです!笑)や、家族の日帰り旅行などで数回来たことはあった。
しかし、鶴岡八幡宮まで来ているにも関わらず、美術館の存在を意識しだしたのは、上京して美術館めぐりを始めた後だった。
なので、実は「鎌倉近代美術館」という通称があったことを知ったのも、つい最近のことだ。
初めて観た展覧会は、1990年夏の「近代日本の木版画展 伝統と近代の対話」。
当時私は、大学の美術サークルで木版画にはまっており、この時も同じく木版好きな、ひとつ下の後輩と二人だった。

二人は展覧会を十分堪能し、この時の買った図録は、私の近代木版画への興味をさらに膨らませてくれる一冊になった(しかしこの時はまだ、鎌近が近代版画の研究で有名なことを知らなかった。全く浅はかな…^^;;)。

しかし、木漏れ日も爽やかなエントランスに、蓮の葉でいっぱいのテラス…、不思議な(?)中庭etc.…。
この建物、そしてロケーションの持つ不思議な魅力も、そのとき妙に心に引っ掛かった。
特に2階から1階のテラスに降りる階段、テラスの風景、中庭を廻って新館に向かう通路あたりで、妙な郷愁、のような感情がわいてくる。
自分のなかの記憶と、一体どこでかぶっているのだろう?と考えてみたが、そうだ、これって昔の「学校」の導線じゃないか!と思い当たった。
私が通っていた小学校は、戦後直ぐ建てられた木造2階建てで、北館、中館、南館、トイレ、あと宿直室や給食室が、外の通路、いわゆる渡り廊下というやつだが…、でそれぞれ結ばれていた。
それに1階の教室には、すぐ外に降りることのできる出入り口があった。
各校舎の間を行き来する時には、とりあえず一度屋外に出てまた室内に入る。
そう考えると、この手の学校建築というのは、結果的に屋外と屋内の境界がとてもあいまいだ。
少なくとも学校で生活する時間の間は、室内にいても外の空気、光の変化、中庭の草の緑や花の匂いを、常に感じられる環境に置かれるわけだ。
鎌近の階段、テラス、中庭の風景から、そんな「いつか学校にあった、あの光と影と空気」を感じてしまうのだが、それは私だけだろうか?…。

展示においても、特に彫刻、インスタレーション系作品には、空間の持ち味と見事に解け合った展示がさまざまに展開されていたようだ。
90年のあと、93年に(同じメンツで)「李禹煥」展を観に行ったのだが、その時に、テラスの片隅の隠れたちいさなスペースに、こじんまりとした石と鉄板を並べた、インスタレーションが置かれていた。
その空間に「ちょこなん」とおさまっていた小さな石の作品に、不覚ながら思わず「かわいい!」と声を上げてしまった(いや、李禹煥作品の観照態度として、叱責に値するであろうことは重々理解しております、でも…^^;;)。

『小さな箱』の中にも、テラスや池を使ったいくつかのインスタレーションの写真がおさめられているが、特に「新千年紀へのメッセージ—イスラエル美術の近代」展の、『カディッシュ ツァバールのためのレクイエム』は、実際に行って観ておけば良かった〜、と思わせる、雰囲気のある作品だ。

#しかし、毎度文句たれで恐縮だが、個人的には、2F展示会場の床面がカーペット貼りなのが気になる。先の「李禹煥」展の時に、インスタレーション作品の質感が活きないな、と感じたからだ。
(ちなみに埼玉県立近代美術館のカーペット貼りも、ちょっと気になってます、はい)

実際、現在の美術館建築のパターンからみると、ワークショップ室も来館者図書室もないし、機能的には物足りない点も目立つ。
私が館を初めて訪れた時、その背後にある業績があまり理解できなかったのも、その辺の「後れ」が目についたからかも知れない。
実際、90年代初めには目黒区美術館や板橋区立美術館など、アイディアと教育活動で勝負する新スタイルの美術館が次々登場していたし…。

そうはいっても、館の関係者の方たちが「小さな箱」と称するように、この建物と、その中に込められた空間がとても大切に、愛され守られてきたことは、館を訪れればひしひし伝わってくる。

新しい「葉山館」も、いろいろ現代的な工夫がされているが、全体に「鎌倉館」の雰囲気を残した建築になっているのが嬉しい。(なーんて、写真で見ただけなんですけどね^^;;)
過去の展覧会カタログを閲覧したり、レストランで風景を楽しんだり、ワークショップなどに参加したりと、こちらはこちらで新たな楽しみに期待したいと思う。
連れ合いが夏休み取れたら、温泉ついでに(こら)、新たな気持ちで鎌倉館、葉山館を訪れてみたいなぁ。


おまけ:神奈川県立近代美術館のサイトです、葉山館の情報もばっちり載ってます。
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/index.html

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