« 「新着記事一覧」に2番目の記事がアップされちゃうの謎 | Main | 「新着記事一覧」の謎、後編 »

2004.05.07

『ロシア・アヴァンギャルドのデザイン—アートは世界を変えうるか』海野弘

タイトル:『ロシア・アヴァンギャルドのデザイン—アートは世界を変えうるか』
著者:海野弘
出版社:新曜社
定価:2200円
初版:2000年9月
ISBN:4-7885-0736-6

==============================

海野弘という名前には、小学校のころに毎月家に届いていた『花椿』を通じて、古くから馴染んでいた。
彼の明解で読みやすい文章で描かれる、アール・デコやモダンデサインの世界は、その後の私にもいろいろ影響をおよぼしてくれたと思う。
何しろ、10歳やそこらのチビっ子が、「バウハウス」とか「イサドラ・ダンカン」なんていう単語を覚えてたのだから…(今考えると超なまいき!^^;;)。

あとがきによれば、ロシアのモダンデザインの動向について彼がまとまった言及をするのは本書が初めてだったらしいが、そうは思えないほど分かりやすくまとめられている。
もちろん、いつもながらの簡潔で親しみやすい文体で。

ロシア・アヴァンギャルドといえば、ロシア革命からスターリン体制に至るまでの期間に広まった、マルクス理論を基盤にしたデザイン運動だ、とまとめられるが、そのなかでさまざまな体制、路線、作風の違いをもつ作家たちが、複雑に絡み合って時代を進んできた様子が良く分かった。
構成主義やその周辺の各理論は、マルクス理論自体も深くは把握してない私には、ちょっと難解ではあったが、それでも理解の大きな手助けにはなったと思う。

また、革命直後ソヴィエトといえば、国際社会で突出した存在であったように思っていたが、実は文化面ではパリやドイツなどとの交流がかなりあり、またロシア独自の民俗芸術が、西欧である種のエキゾチズムを持って迎えられていた時代背景なども描かれているのが、個人的には認識を新たにするところだった。
この点では、パリを中心に活動していた「バレエ・リュス」に関する記述などが、特に興味深い。
(もっとも私は、バレエ自体は全然詳しくないんですが…)。

海野氏の文章はとても平易で好きなのだが、参考論文として読むにはちょっと一般向けすぎるのと、どうしても人物列伝的な要素が多くなってしまう(それはそれでとても参考になるのだが)のが、個人的には惜しいなと思う。
この本も、後半1/3は、人物別の生涯と作品紹介に割かれているし…。


私が、今ロシア・アヴァンギャルドを読んでいるのは、ひとつは学校の「現代芸術論」の課題のためでもある。
ただもともとは、韓国における「社会運動と連結した芸術運動」への関心から、派生している。
韓国現代の、特に80年代の民衆芸術運動は、いわゆる社会主義的な芸術運動…、メキシコ壁画運動、中国の(魯迅が指揮した)木刻運動、また木刻運動が影響を受けた東欧の社会主義リアリズム的表現(ケーテ・コルヴィッツのような…)etc. を、思想的な下敷きとしている。
そこで、どんどんこのロシア革命期…1920年代を掘り下げていくと、ロシア・アヴァンギャルドも避けて通れない道であるというわけなのだ。
もちろん、ロトチェンコやステンベルク兄弟のデザインがクールで大好き!という、感情的なソレもあるんだが(笑)。


最後に。
この本では、というか、一般的には、ロシア・アヴァンギャルドはスターリンらの社会主義リアリズム主張者によって否定され、第一線から退いた、ということになっている。
しかし、ちょっとこれとは違う、結局どちらも同根ではないか?という理論を展開している、別の本を、ちょうど読み始めたところだ。
こちらも読み終わったら、改めて感想を書いてみたいと思う。

|

« 「新着記事一覧」に2番目の記事がアップされちゃうの謎 | Main | 「新着記事一覧」の謎、後編 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21882/552250

Listed below are links to weblogs that reference 『ロシア・アヴァンギャルドのデザイン—アートは世界を変えうるか』海野弘:

« 「新着記事一覧」に2番目の記事がアップされちゃうの謎 | Main | 「新着記事一覧」の謎、後編 »