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2004.05.22

『身辺図像学入門 大黒からヴィーナスまで』岡泰正

タイトル:『身辺図像学入門 大黒からヴィーナスまで』
著者:岡泰正
出版社:朝日新聞社(朝日選書)
定価:1400円
初版:2000年3月
ISBN:4-02-259746-1

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正直なところ、私は「図像学」とか「美術解剖学」とかいうことばに、悪い言い方をすれば「うさんくさい」ものを感じていた(笑)。
しかし、学校の課題の中に、図像に関する記述があったのと、同じ時に図書館から借りてきた『カラー板 世界版画史』のなかの参考図書にこの本が載っていたので、それではと、一旦先入観を忘れて読んでみることにした。

そしたら、これが意外におもしろい!(汗)。
日本の生活の身近なところにある、一見何気ない図像、…かき氷の旗の波模様とか、お皿に描かれたパターン、「バーミヤン」の桃、「バイキンマン」に見る典型的な悪魔像…、などを取り上げて、それぞれの歴史的な意味や伝承、その変遷を、平易な文章でおもしろく紹介している。
著者はバリバリの関西人で、神戸市立博物館の学芸員なので、おのずと近畿地方の事物を取り上げて説明している。
項目によっては、関西の歴史文化がピンとこないと分かりにくい項目もあるかも知れない。
自分も、バリバリの関東人(…)なのだが、京都人との結婚によって(汗)、幸いにも伏見稲荷なども訪れる機会を持つようになった。
丁度、本書でも伏見稲荷の狐にまつわる故事から、神社と狐の関係を描き出しており、こうした項は特に面白く読めた。

本書を読んだ限りでは、全体的には、日本の伝統的な図像の意匠は、中国の故事に基づいているか、あるいはそれに日本的なアレンジが加わったものが多いようだ。
一方、私は本書を読みながら、朝鮮半島の伝統的な図像のことを思い出していた。
前に読んだ『美しい私たちの閏房文化』という韓国の本は、元々は朝鮮の伝統刺繍やポジャギなど、いわゆる「針仕事」に関する諸事を集めた本なのだが、その中に、刺繍に描かれる伝統的な図像について、その由来がいろいろと紹介されていたのだ。
日本、朝鮮ともに、思想的なルーツが中国なのだから当然と言えばそうだが、お互いの図像やその由来には、とても共通点が多い。
「寿」「福」の字を、各100通りの違う書体で書いた「百寿」「百福」の意匠も、共通しているし、鯉を出世の象徴としている点も同じである。
(ただひとつ、朝鮮では「蝉」の意匠が、7年土中で生きる生命力の象徴として、刺繍や装身具に多用されていたそうだ。日本では蝉模様があるなんて、あんまり聞かないが…)
以前、その『美しい私たちの閏房文化』を、「こうやって朝鮮の意匠の由来が分かると、ためになるなあ」と感心しきりで読んでいた私が、今さら「図像学ってどうよ?」なんて訝しがっていたとは、今さら全く恥ずかしいことだ(大汗)。
今後この手の本をどこまで自分の役に立てられるか分からないが、また工芸品の勉強に当たることがあれば、図像の由来にももっと関心を持ってみようと思う。

先にも述べたが、各項目が最大5ページくらいの短いエッセイ形式になっているので、とても読みやすくなっている。
何でも、週刊朝日百科『日本の国宝』にコラムとして連載したものに、加筆してまとめた本だそうだ。
で、それが「朝日選書」シリーズから出版されたのだが、正直言って、新書判でカラー口絵なし1400円は、高すぎるんじゃないの!?(笑)。
いや、この手の専門書って、そういうものなのかなあ。

何をおいても、100%褒め言葉では気がすまない、文句たれの私でありました(汗)。

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